正面玄関を入ると、大手警備会社のセキュリティシステムがあり、突き当たりに公衆電話が設置されていた。現金で掛けられる。時計は丁度六時を指していた。アメリカ屋のフリーダイヤルは、午後六時までのはずだった。手が勝手に受話器を取り上げていた。
『大阪屋でございます。本日の営業は終了いたしました……』
やはり営業は終わっていた。ふと、留守電の内容に引っ掛かりを覚えた。もう一度、電話を掛けた。
『大阪屋でございます……』
大阪屋と名乗った。昨日はアメリカ屋だったが、今日は大阪屋と名乗った。
薬事法は、アメリカ屋にも少なからず影響を与えていた。
エレベータが下りてきた。
オペレータたちの退社は六時過ぎであろう。残業をしなければ、そろそろ出てくる頃だ。
表示は七階から止まることなくカウントダウンしてきた。
ひとつしかないエレベータである。五階ならエレベータを使うはずである。