『アメリカ屋でございます』
受話器からオペレータの声が返ってきた。野村ではない。声が柔らかい。
「あの……、返品の住所を教えてください」
唐突にそう言った。
『ご返品ですね。お電話番号をお願いします』
顧客を特定しようとした。怯んだが、
「いや、さっき聞いたんやけど、聞き逃したから、もう一回……」
『かしこまりました』
オペレータは機械的に了承し、アメリカの住所を言い始めた。
「いや、そちらが間違えて……送られてきて、国内の住所に……」
恐る恐る伺ってみた。月日が過ぎて対応が変わっている可能性もある。
『申し訳ございません。弊社が間違えた商品をお客様にお届けしてしまったのですね。では、申し上げます。大阪市中央区……』
大阪の住所を言い始めた。変わっていない。メモに書きとめ復唱した。