「ね、殺意を抱きませんか?」
そう言うと、ベンチの男はきょとんとした顔をした。
「余計なこと言うからや。せめて電話切ってからにせなアカンわ。アホやな。ほんで、……どないなったん?」
返答は質問に取って代わっていた。もともとこの男は、罵倒が殺人未遂を生んだ事件のことをあり得ないと言った。可能性について話していたはずだが、焦点がすり替わってしまった。まるでドラマの話を聞いているようだ。
続きを知りたがった。暇は十分あるのだろう。細い目を倍に見開いている。
三面記事が好きなのだ。それが現実であってもそうでなくても、この男には物語でしかない。