「は、はい」
『あ、あの、育毛剤のことでお伺いしたいんですけど……』
抑揚は雑だったが、口調は礼儀正しかった。
『日本で、同じ成分の育毛剤が販売されるって聞いたんですけど』
そう言われて愕然とした。予想外のことに答えようがなかった。調べると言って、電話を切った。アメリカ屋に電話をするか、インターネットで調べてからアメリカ屋に電話をするかを迷ったが、結局、ちょっとした知識を身につけるため、先に調べることにした。
その育毛剤は存在した。大手製薬会社から数日後に「リグロウ」という名称で販売される予定だ。成分のミノキシジルは1%だった。今使用しているのは5%、五分の一の量だった。少しホッとしたが、国内で市販されれば、流れる者も出てくるだろう。
アメリカ屋に電話を掛けた。オペレータはその育毛剤のことを知っていた。