旧堺港界わい

Keishin Honda

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「おっちゃん、今、在庫切れてるねん。到着が遅れてるみたいで。今から確認するとこやねんけど、後、どのくらいある?」
 少し焦っていた。通常は十日くらいで届くが、遅れたらもう届かないこともある。アメリカ屋にその旨を伝えると、再送してくれるが、また日数が掛かってしまう。
「まだ、大丈夫やで、二、三日はあると思うし」
 主は暢気だった。抜け毛が減って有頂天になっているのだ。新聞記事のことや、二、三日でなくなってしまうことなど、何の不安もない。これは、本人にしか解らない喜びだ。この素朴な表情を見ると、十日間待ってくれとは言えなかった。
「おっちゃん、僕の一本使っといて。到着したら、返してくれたらいいから。効果出てるときに間おくの勿体ないし、使用止めたら、また元に戻ってしまうし」
 思わず、自分の一本を差し出した。機嫌よく主が帰っていくと、急いで電話に駆け寄った。受話器に手を伸ばすと同時に、ベルが鳴った。

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