『ありがとうございます、アメリカ屋、野村でございます』
オペレータもいつも通りだった。
「あ、あの……、新聞記事を見たんですけど」
おずおずと切り出すと、
『ああ、再販のですか?』
返事が返ってきた。やはり煽りはあったようだ。
『育毛剤は個人輸入の範囲でお取り寄せいただける商品で、日本国内での販売は禁止されていますから……』
「アメリカ屋さんは、大丈夫なんですか?」 思い切って聞いてみた。
『弊社は、アメリカの法人会社ですので、日本のお客様が私どもからお買い上げいただいている……個人輸入されているという形なので、特に問題はありません』
そう言われて絶句した。アメリカ屋は日本の会社ではなかったのだ。商品は確かにアメリカから送られてくる。関税も支払ったことがある。そのとき、初めて自分が個人輸入していることに気付いた。