日増しに野心が高まる息子に、忠告したのは母親だった。
「すぐにダメになるから、就職して地道に働きなさい」
そしてその母親の言葉は、一ヶ月後、見事に的中した。
輸入代行を名目に育毛剤を再販していた会社社長が、大阪府警に連行された。雑誌に広告を出したことが、逮捕の理由だった。新聞沙汰にまでなった。
「光男、これって……」
母親が顔を歪めた。店頭に貼った広告をすぐさま外し始めた。
「アメリカ屋は……」
パソコンを開き、アメリカ屋にアクセスした。アメリカ屋こそは、大元の販売店なのだ。しかし、ホームページには何の案内もなかった。いつも通り営業していた。
自然と電話に手が伸びていた。