「おばちゃんも、髪の毛、薄くなってきてな……」
嫁は母親と顔を見合わせ笑った。
はっとする思いだった。女性用の育毛剤が存在していたことを思い出した。知っていながら、女性が髪の毛の心配をすることを想定していなかったのだ。女性は禿げないという根拠のない考えがあったせいだろう。
八百屋の嫁の頭を見ると、若干薄い気はしたが、男が気にしているレベルではない。しかし、女性は少しでも気になるのだろう。
「おっちゃんが使ってるヤツ、5%で強いねん。男の人でも被れることあるから、やめといた方がええで。女性用あるから取り寄せよか? 2%やから、優しいと思うねん」
嫁も主と同じように目を輝かせた。
人と会話することが初めて楽しいと思えた。アメリカ屋のホームページの書き込みを他人事に思っていたが、ひとつずつ理解できた。突き当たる問題をアメリカ屋はすべて知っていた。答えはすべてホームページに書かれてあった。