旧堺港界わい

Keishin Honda

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 青碧駅に着いたその列車から降りた客は二人いた。一人は達也だった。八月下旬になると海水浴も引き潮だった。達也にしてみれば遠海が望んだ場所はここしかないと思ってのことだ。
 静かな道を一心に海へ向かって小走りに歩いた。達也はずっと遠海だけを見てきたが、その日ほど遠くに感じたことはなかった。彼の足はまた自然と速まっていた。
 防波堤から海を見下ろした瞬間、達也は自分が別人になるような気がした。そして遠海の存在を肌で感じることができた。
 ふと視線を止めた先に何かか浮かんでいた。沖へ沖へと進んでいるように見えた。達也は、慌てて浜へと降りた。その海に慣れていない動作の達也を見つめていたのは海里だった。海里には達也が遠海を探しにきたことが何となく判っていた。

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