「ありがとうございました……」
遠海はすぐに言われた方向に歩き出した。
「遠海ちゃん、何処行くん?」
松葉杖で追いかけてきた海里が遠海の様子を心配顔で見つめている。
「海里くん、行かないといけないとこがあるの。後で、後でね」
遠海は足を止めることなく先を急いだ。
「後で……な」
海里はそんな彼女を見送った。
通りを渡って、食堂とタバコ屋の間の道……、遠海は呟きながら海里の祖母の言った道をたどった。すぐに病院が見えてきた。外科・内科・循環器消化器科と看板にある。診療所を想像していた遠海には予想以上に大きな病院だった。入ってすぐのところに受付があった。何人かが会計の順番を待っていたが、静かで、病院の人間も忙しく動いている様子はなかった。