「何しにきたん? こんなとこに」
老女は無愛想に口を開いた。
「ちょっと……知りたいことがあって……」
威圧のある老人に、遠海はたじろいだ。
「親御さんは、知ってんのか?」
その低い声に、遠海は口篭もった。
「おっ、ばあちゃん、帰ってたんか、この人は、遠海ちゃん。家出中やからしばらく泊めたってな」
勝手に話す海里に口を挟むように、遠海は撤回した。
「あの、私は大丈夫なので、あの、すみません。泊めてもらおうなんて思ってませんから」
「何言うてんねん。また浜で寝るんか?」
海里はお節介だったが親切だった。それに引き替え、その祖母はまるで愛想がなかった。
「早く帰った方がええ」
老女は、スーパーのビニール袋に詰められた食材を両手に提げ、すぐにまた引き戸をまたいで出ていった。