旧堺港界わい

Keishin Honda

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「暑は夏いからすぐ乾くねん。ああ、あのビニール袋におにぎり入ってるで。ばあちゃんが作った。腹減ってんねんやろ?」
 少年が指差す方向にスーパーのビニールが置かれていた。
「缶のお茶も入ってるやろ、売りもん盗んできたった」
 遠海は言われるまま、ビニール袋を取りに行った。彼の言うとおりおにぎりらしきアルミホイルで包まれたものと缶のお茶が入っていた。
「腐ってへんで。腐ったもん出したら、店、営業停止やから」
 海里の家は夏の間、海辺で店を出しているようだった。遠海は少しずつ開店し始めている海の店を遠めに見た。
「もしかして、毛布も海里くんのおばあちゃんが……」
 そう呟くと海里の隣に座ってお茶を取り出した。
「何しにきたん? まさかひとりで海水浴?」
 海里は質問ばかりした。まるで長い間人と話してなかったかのようにまくし立てるのだ。

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