旧堺港界わい

Keishin Honda

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 遠海の家のすぐ前も海がある。昔、貿易の栄えた港だ。夕方になると、風に乗って汐の香りが感じられる。青碧にも同じ空気があった。
 海が近い。
 遠海は足を早めた。人気もなく普通なら十七の少女がひとりで歩く場所ではなかったが恐くはなかった。そしてその海を目にした瞬間、後悔することは何もなくなってしまった。
月に導かれる一筋の光、遠くから自分を呼ぶ声が聞こえてくるようだった。遠海は、迷うことなく海岸へと降りていった。
 涙が止めどなく溢れてきた。

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