旧堺港界わい

Keishin Honda

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 切なげに唇をキュッと噤んで遠海が玄関を入ると、すぐに父親の声がした。
「遠海」
 食事中だった。部屋に押し掛けられて説教される前に、遠海は台所に顔を出すことにした。
「ただいま」
 テーブルで、家族三人が仲良く夕食を取っている。これもまた理想の家族だ。美人の継母は今時珍しく夫を立てる女。無口な義妹は伸哉と同じ年だが、突拍子もない夢など持たず、公務員になるためにだけ勉強している。無表情な所が現在の父親によく似ていて、彼女の方が本当の娘のようだった。
「ご飯は?」
「たっちゃんとラーメン食べてきたから」
 この輪に入るのが嫌で嘘をついた。
「受験勉強してるのか? 水泳で声を掛けてもらったからって、故障した時のことも考えてるのか?」

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