旧堺港界わい

Keishin Honda

   ※カテゴリーのタイトル別に1から内容が続いています。

8

「あたし、青碧の海に行きたいんだ」
「青碧? あんなの日帰りビーチじゃん。オレが取ってきたチラシの……」
「淡路島もいいんだけど、でも……。近くに泊まるところ、あるよね。青碧でも」
 立ち上がって返事した遠海は、達也の肩ほどしかない小柄な少女だ。
「まさか、まだ泳ぐつもりか? クラゲ出るぞ」
 達也は、そう言って遠海を笑ったが、一泊二日の二人だけの旅行に、彼女が同意したことに、踊り出す気分だった。達也としては、一泊というところが何より大切なのだ。場所ではない。下心を隠して、スポーツマンとしての爽やかな笑顔を作ろうと努力したが、別の方向を見ている遠海の瞳には映らない。

当サイトに掲載の記事・写真・図表など転載を禁止します。
Copyright (c) 2020 KSHD All Rights Reserved.