その美しい泳ぎからは想像も付かないような動きをして、水面をバシャバシャと手のひらで叩き始めた。
彼女に身に何かが起こった。足が攣ったのか、それとも肉離れか。
ロッカーの陰に隠れた男は、反射的に足を踏み出したが、すぐに思いとどまった。何故ならそのために、何度も何度もここを訪れているのだから。
彼は冷酷にも、溺れている少女をカメラのレンズを通して覗いたのだ。
「大丈夫だ、絶対、大丈夫」
男は心の中で何度も呟いた。彼女が力尽きて水面下に沈んでいっても、彼は決してカメラを放しはしなかった。
ボコッボコッと水面に泡が浮かんできたとき、水はすでに穏やかに揺れているだけだった。少女は沈んでしまった。