私はそんな死に方を選んだ母を恨むことはありませ んでした。あなたと手紙を交換するうちに、母の気持ちが理解できるようになっていたのです。あなたは私です。それ以上でもそれ以下でもありません。
私は両親のような広い愛情を持ち合わせてはいませんが、宿命を否定しようとは思いません。出会う宿命にあったのです。心から感謝しています。
そういえば、あのイギリス人は、ピーターという名前でした――
「ピーター……」
私は思わず声を漏らした。
昔々、ピーターとハンナという仲のよい若い男の子と女の子がいました……、祖母は確かにそう言っていた。ハンナは祖母のことだ。私は聞き間違えていたのだ。ハナをハンナと思っていたのだ。いや、ピーターがそう呼んでいたのかも知れない。祖母の名前は花子だ。
私は 大きく息を吸い込み、しばらく吐き出さずいた。自然と涙がこみ上げてきた。
母はこれを伝えたかったのだ。指輪のためではない。
私もそんな風に誰かを愛せるのだろうか……。