当然、彼が母にとってどんな存在だったの、当時の私にわかるはずがありません。外国人は珍しくありませんでしたから、ただ道を尋ねただけの通りすがりの人だったかもしれないというのに、私は何かに怯えて不安に思っていたのです。
小学生だったあの日、あの人に会っていなかったら、私はこんなにも苦しむことはなかった。兄たちのように、余計なことを考えず幼少時代を過ごしたかった。ハローという言葉を聞くたびに、青い目の人に会う度に、私はあの人を思い出さなければならなかった。
良い思い出ばかりを残していれば、母は一生忘れることができない。母の愛情はあの外国人が離さないまま、父は母との生活だけを得ました。
その外国人の愛情なんか、可愛いときだけ孫を可愛がる祖父母の責任のない愛情のような、そんな風にしか思えなかった。
父と私たちの犠牲になった母を恨むのはお門違いなのに。