旧堺港界わい

Keishin Honda

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 ゆっくりと裏を向けると、やはり北村美和子、母の名前があった。文字がどことなく若い気がした。
「私が言葉で話すよ り、お母さんの声であなた自身がこれを読んだ方がいいと、私が判断しました」
 私は背中を押されて、中身を取り出した。十枚近くあるだろうか、決して薄くはない。

 

――今日はご挨拶を控えます。 母が自殺しました。いつかこうなると思っていました。

 

 私は最初の部分だけを読んで顔を上げた。田嶋さんは、それを予期していたように頷いた。信じられなかった。母は作り話を手紙にして彼に送っていたのだとさえ思った。祖母は交通事故なのだ。自殺ではない。

 

――以前も何度となくお話ししましたが、母には好きな人がいました。父と結婚する前から、母がずっと好きだったあの人です。何故今頃……と、あなたも思うでしょうね。

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