田嶋さんの家に着いたとき、ある意味で私の不安は消えたと言っていい。
「よく来てくれました」
そう言って私を出迎えたのは、年配の男性だった。
「父です」
田嶋さんは言った。
「美和子さんのお嬢さん……お会いできるのを楽しみにしていましたよ」
懐かしいものを見る目で、田嶋さんのお父さんは私を見つめた。
「は、初めまして……」
「お母さんによく似ている。私の知っている頃の……」
私は不可解な安堵に包まれた。きっと心のどこかで、この対面を期待していたのだ。しかし、その反面、別の不安が生まれた。
「田嶋健一郎です。お母さんと文通していたのは私です」
会った瞬間に体の一部が予感していたことを、今、目の前の人が言った 。私が会わなければならなかった田嶋さんは、あの若い女性ではなく、この人なのだ。確かに納得がいく。しかし、納得はできない。